中学校進学にあたり、いじめられないか心配

子育て相談シリーズ①

保護者向けに子育て相談を行なっています。

相談内容

今回は、小学校6年生の眞くん(仮名 男児 自閉症)が、中学校の特別支援学級に進学するにあたり、1歳年上のAくん、Bくんにまたいじめられないか、親子共々心配であること。中学校には、別々の学級にしてほしいとお願いしたが、「保証できない」と言われている。眞(本人)は、「頑張る」と言ってはいるが、励まし方、対処法を教えてほしい。

今回の相談後、気持ちが楽になると嬉しい。(2023.3.30)

◆1 母親の訴え

●母親:今度中学に進学する眞は、1つ年上の2人にまたいじめられないかと不安がっています。(小学生の時に、同じ特別支援学級に在籍していて、その時にいじめられた)

そこで、先日中学校の支援級の先生とお話する会があった時に、小学校の時に二人にいじめられたあらましを話し、「その二人とは別のクラスにしてほしい」とお願いしました。しかし、「クラス分けについては保証はできません」と言われました。

○私:3学級しかないし、色々な要素を考慮して学級編成するので、保証は難しいでしょうね。

●母親:まず、眞本人がいじめられた時の辛さ(その子たちが小学生だった時のこと)を、中学の支援級の先生に色々と話しました。
眞がその嫌な思いを表現する時に、「殺してやりたい」という言葉を使ってしまいました。
そしたら、支援級の先生は、
・「所持品検査をします」とか、
・「そんなに気になるんだったらリモートでの学習もあります」とか、
・「ここの中学でなくても、Y病院内の特別支援学校もあります」とか言われました。
中学校のこんな対応に怒りを感じました。

○私:もうその学校に行くと決めているのに、そんなこと言われても困りますよね。
「殺してやりたい」というのは、それほど嫌だったということを言いたかったのでしょう。
ただ、所持品検査については、昨今の現状からそう言わざるを得なかったとは思います。

●母親:ちょうどその後、H医師のところに行く日だったので、いじめの件を含めて、診断書を書いてもらいました。
そして、後日、中学校の校長先生にそれを渡しがてら、この支援級の先生の対応に納得がいかないことをお話ししました。
そしたら、校長先生は「申し訳ない。ちゃんと受け入れて対応するから、安心してほしい」と言われました。

◆2 いじめ対処法のポイント1ーちゃんと話を聞いて不安な気持ちを受け止めるー

○私:さすが校長先生ですね。トップが事情を知って対応すると言ったわけですから、ひと安心ではないでしょうか。

ピストルの音が耐えられなくて、徒競走の練習に参加できないでいた子を担任したことがあります。アスペルガーの小2男児だったのですが、聴覚過敏でピストルの音が耐えられないわけです。その子にとっては、ピストルの音が問題行動の引き金になる危険因子です。(15年以上前の実話)
どうやって対応したかというと、耳栓をして徒競走の練習をしました。そして本番でも耳栓をして無事徒競走に参加できました。この場合、耳栓がその問題行動を抑制する保護因子です。
つまり、危険因子を減らす、この場合で言えば「遠ざける」、保護因子を増やすことが対応の基本なんです。

●母親:(ふむふむ)

○私:今回のケースの場合、1つ年上のAさんとBさんが危険因子に当たりますね。だから「別のクラスにしてほしい」というのは、「遠ざける」という意味で方向としては間違っていません。ただ、3クラスしかないので、それぞれの要望を聞いていると、学級編成が難しくなります。だから、「保証できない」となるのですね。ただ、AさんとBさんは知的学級で、眞くんは情緒学級なので、おそらく別のクラスになるのではないでしょうか。それでも、同じ支援級なので、一緒に行動することはよくあるとは思います。

○私:ポイントは、保護因子の方をしっかりとすることですね。
眞くんは、またいじめられないかと心配しているわけです。安易に根拠もなく「大丈夫だよ」と言われても、納得しないでしょう。まずは、正対して話をちゃんと聞いてあげることですね。そして、本人の辛い気持ちを受け止めてあげることです。「辛い気持ちをわかってもらえた」と本人が思っただけで、不安感が減り安心できてOKのケースも結構あります。

●母親:なるほど。

◆3 いじめ対処法のポイント2ーどうしたら安心できるか一緒に話し合うー

○私:さらに、「どうしたら安心できるか一緒に考えよう」と言って、本人と話し合うといいと思います。

○私:子どもに考えさせることが重要で、子どもは大人も考えつかないアイディアを出すことがあります。

I小学校で4年担任だった時に、「K子さんが、登校班長になったのに遅刻をして困る」という訴えがありました。私がK子さんに色々と聞いてみると、ゲームにはまって10時ごろまで起きていることがしばしばあり、そのせいで朝起きられないことがわかりました。「じゃあ、どうしたらいい?」と本人に聞いたら、K子さんはなんと「目覚まし時計があればいい」と言いました。そこで、おうちの人に「目覚まし時計を用意してあげてほしい」と伝えたところ、なんと目覚まし時計で遅刻が解決したんです!私としては、ゲームを早めにやめて、早く寝ることが解決策だと思っていたのですが。(25年ほど前の実話)

ですから、本人に考えさせる事は、大人が考えもしない解決法が見つかる可能性があるのです。だから、大人が「ゲームを止めて早く寝たら」というように解決策を与えるのではなくて、まず本人に考えさせることが大切なポイントになります。

もちろん、本人が考えつかない場合は、こんな方法もあるよと提案するのは構いませんし、いくつかの中から本人が納得する方法を選んで試していけばいいと思います。
今回のケースで言えば、担任などに訴えるとか、負けずに言い返すとか・・・いくつかありそうですね。

●母親:ここの中学校には、「意地悪なことをやったり言ったりしたら、たとえ先に言ったのでなくても言い返した場合でも、すぐに家に帰す」というルールがあるんです。

○私:そうですか。言い返しても、家に帰されるんですね。だったら、言い返さずに、そのまま「○○に悪口を言われた」と訴えればよさそうですね。

◆4 いじめ対処法ポイント3ー親はでーんと構えて、子どもの話はきちんと聞くー

●母親:(話を聞くうちに随分落ち着いてきて)なるほど。忙しくてなかなか話を聞けないことがあるので、今度からちゃんと話を聞こうと思います。

○私:それでも、意地悪はあるかもしれませんが、<最悪でも意地悪な言葉と、あとが残らない程度に叩かれるぐらい>ですよね。支援級だから、すぐそばに先生がいますから、助けを呼べますよね。

だから、親自身、必要以上に心配しないで、
<母親は、でーんと構えて、子どもの話はちゃんと聞く>というスタンスの方がいいと思います。
親が不安がって動揺していると、子どもも動揺しがちになりますから。

○私:それでも、わが子が心配だと思うんですが、いつもそばにいられるわけではないのですから、腹をくくるしかないですね。

私も、高齢で認知症の母が雪の日とか散歩に出るとか言うと、「転んで骨折するかも」とか、実は心配でしょうがないんです。でも、家の中に閉じこもっていると、認知症は間違いなく悪化します。それに本人は出たがります。「もう転んで骨折したらしょうがない」と腹をくくってるんですよね。

◆5 その後どうなったか!?

ここまでで、30分ほど。母親も納得されたようで、この話題はここで終わりました。

その後、中学校卒業後の進路のことや、次男のことについて相談を受けました。ここは割愛しますが、以上50分の子育て相談でした。

その後、どうなったか報告を受けました。本人が拍子抜けするぐらい(本人「夢じゃないかと、ほおをつねってみた」)、いじめはなかったそうです。
事前に校長先生はじめ特支の先生方に話しておいたことが良かったのでしょう。おそらくは、1つ年上のAさんとBさんに事前にしっかりと指導していたのでしょうね。ですから、いじめについては学校にしっかりと伝えることが最大の解決策だと言えそうですね!

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