発達障害児の子育てに役立つ実践例シリーズ②
わが子を、通常学級に入れるか特別支援学級に入れるかで悩む親は多いです。
基本は、その子にとって一番合っている教育の場(学級)は、現時点でどちらかという一点でしょう。
親のミエを乗り越え、学校の教員や医師の意見を聞き、冷静に判断すべきでしょう。
特別支援学級での授業の様子を知ることは、判断するうえでの参考になリマス。
そんなわけで、特別支援学級の担任であった私のハンドベースボールの授業の様子(2009年6月)を紹介します。
(私は特別支援学級の担任を10年、通常学級担任を約20年、特別支援学校の担任を3年経験しています)
ハンドベースボールを楽しむ子ども
運動会が終わり、体育では「ハンドベースボール」を指導することになっています。
私の願いは、担任しているAさん、Bさんが通常学級の子供たちと同じように、ハンドベースボールを楽しめるようになることです。
そのために、特別支援学級担任の私が打っている手は、どんなことでしょうか?
Aさんも、Bさんも、特別支援学級での体育が2時間、交流の体育が1時間です。
◆1 事前に打った手
まず、ハンドベースボールの交流学年でのルールを事前に確認しました。
・ファーボールはなし。三振はあり。
・スリーアウトチェンジ。
・フライやライナーを捕ればアウト。
・リードや盗塁はなし。
次に、使う野球道具を確認しました。
・コンニャクボールとプラスチックのバットを使用。
(当初はハンドベースボールということで、手で打つ予定で合ったのが、子どもの希望で変更になったそうです。)
・1塁、2塁、3塁、本塁のベース。
なるべく同じようなルールで、同じような道具を使いたいところです。
そして、家から「野球盤ゲーム」(長女にクリスマスに買ってあげたもの)をもっていき、それで遊びながらルールを教えました。
幸いなことに、AさんもBさんも「野球盤ゲーム」に興味を示し、喜んで遊びました。
◆2 特別支援学級での体育「ハンドベースボール」
さて、今週から特別支援学級での体育は「ハンドベースボール」です。
私がピッチャー(打ちやすいボールを投げるため)でボールを投げます。
それを、Aさんが打って、Bさん(と私)が守ります。
1アウトでチェンジ。
今度は、Bさんが打って、Aさん(と私)が守ります。
1塁しかなく、打ったら1塁を踏んで本塁に戻ってきて1点となります。
フライを捕られたり、本塁に戻るまでにタッチされたりすれば、アウトです。
私「ほら、いくよ~。えい。」
Aさん(バットを振って、センターオーバーのヒット。センターにはBさんが唯一守りについている。)
「やった!」(すばやく1塁を回り、本塁を踏む。)
「1点だ。先生、すごいでしょ、ボク!」
私「すごいね。」
こんな感じで、1時間3回の攻撃のうちに、10点も点を取ったAさんは、大満足。
何回も、「先生、ボクってすごいでしょ。」と言っていました。
今度は守りに入るAさん。Bさんが打つ番です。
私「ほら、いくよ~。えい。」
Bさん(バットを振って、センター前のヒット。センターにはAさんが唯一守りについている。)
「やった!」(すばやく1塁を回り、本塁に向かう。)
Aさん(ボールはストレートに届かないが、フォーバウンドぐらいして、本塁にいる私の所に来る。)
「あ~。」(ボールを遠くは投げられない。ボクって守りはダメだな~)
私「いい感じだよ。ちゃんとホームにボールが来ているよ。」
攻めるときは、自分一人だから、すぐに打順が回ってくるというか、いつも打つ番です。
守るときも、自分でボールを追って、ホームにいる私めがけて送球するので、これまた運動量が多いです。
私が打ちやすいところに投げているし、6振(5回まではストライクでもアウトにしない)でアウトにしたりしたので、二人ともバンバンヒットを打っています。
たった3回の攻撃で、Aさんは10点、Bさんは7点入れました。
こんな感じで汗びっしょり。
Aさん「守りはちょっとだけど、ボクって天才打者。すごいでしょ。」
とても満足した二人でした。
◆3 「特別の配慮」で楽しくかつ鍛えられる
少人数で特別の配慮のある特別支援学級ならば、何回も何回も打順が回って、打ちやすいところにボールが来るのでよく打て、十分楽しめます。
練習量も多いので、自然に打つ力も身についてきます。
守備も同じで、自分が中心になってやらなければならないので、必死になります。
ボールを捕り、アウトにできるように下手でも毎回毎回必死で投げてきます。
私は、うまいところを見つけてほめるので、やる気は続くことになります。
タッチの差でセーフにしてあげたり(その方が必死で走る)、徐々に投げるボールを速くしたり、私の方で少しずつ鍛えています。
また、通常学級との交流体育で混乱しないように、ルールを揃えるべく、徐々に6振制から3振制にするつもりです。
通常学級の中に入ると、「(下手)もっといいところに投げて!」と言われたり、通常のスピードのボールを打てなかったり、そもそも順番が待てなかったりするかもしれません。
そんな中で、「ボク、やだ!」と言って投げ出すかもしれません。なんだかんだで、すんなりとはいかない場合も多いです。
それでも、こうして楽しみながら鍛えていけば、7,8人で1チームの通常学級の中でのハンドベースボールに徐々に入っていけるようになるのです。
◆4 終わりに
算数のノート記録を全くとることができなかったAさんが、特別支援学級での2年余りの指導ででできるようになったこと。
そして、今では通常学級で算数の授業を受け、通常の子と全く変わらずにノート記録をとっている姿を思い起こすと、特別支援学級での積み重ねがいつかは功を奏すると考えています。
●わが子を、通常学級に入れるか特別支援学級に入れるかで悩む親は多いです。基本は、その子にとって一番合っている教育の場(学級)は、現時点でどちらかという一点でしょう。親のミエを乗り越え、学校や医師の意見を聞き、冷静に判断すべきですね。
特別支援学級でのあり方もいろいろです。国語・算数だけ通って学習し、あとは通常学級で学んでいるケースもあります。
あり方も、その子の成長に応じて変化していくのです。
*追記ー通常学級での交流体育の様子ー
さて、その週の交流体育は、同じく「ハンドベースボール」でした。
Aさんには、指導員のBさんが付いています。
Aさんは、ボールをうまく捕れないのです。
そこで、B指導員さんは、「Aさんにはボールを転がしてパスして欲しい」と頼んだそうです。
Aさんは、相手が打ったボールもよくトンネルします。そこで、B指導員さんが付いて、トンネルしたボールを拾ってAさんに転がします。その転がしたボールを、Aさんが捕って投げたそうです。
また、Aさんがバッターの時は、B指導員さんが打ちやすいボールを投げたそうです。Aさんはそのボールをホームランにしたようで、「ボク、ホームラン打ったんだよ。」と嬉しそうにボクに報告してくれました。( 私は、その間別の子に算数を教えていた。)
特別支援学級に在籍するAさんは、交流学習においてもサポートが付きます。
こうして、Aさんは楽しみながら交流学習も進め、成長していきます。
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