わが子は発達障害かも……!?

目次

発達障害児の親のお悩みトップ10シリーズ①

わが子は発達障害かもしれない!?
そう思った親が持つ10の悩みについてのQ&A

わが子が自閉症の可能性が高いと思った母親は、二日間眠れないほど悩んでいました。

そして、特別支援学級担任であり、いとこでもある私にその悩みを打ち明け、アドバイスを求めてきました。

たっぷり1時間に及んだQ&A。そこで出た10の悩みは、発達障害児をもつ親の共通した悩みだと思われます。ですから、同じように悩んでいる親御さんに、きっと役立つことでしょう。

◆1 【自閉症】の疑いのあるわが子

母親「ねえ、今、とても悩んでいるの。息子(長男)が自閉症みたいなの。ずっと変だと思っていたんだけど、この間、幼稚園の先生に話したら、幼稚園でもおかしいと思っていたみたいで、専門家に診てもらいましょうって。」

私「(長くかかりそうだな。)遠くからだから、電話代かかるけど、いいの。」

母親「いいの。それどころじゃないの。もう二日間寝てないの。」

(どこが変だと思うか、詳しく話す。)

母「インターネットで調べた自閉症の質問項目に、ほとんど当てはまるの。
だから、息子は自閉症、そうでしょう?!」

私は、専門家でなければ診断できないこと。インターネットで、自分たち(夫も入れて)で判断するのではなく、あくまで専門家による診断が正しいことを話した。

ただ、幼稚園の先生方も、おかしいとずっと感じており、専門家への診断を勧めた以上、母親としては可能性が高いと判断していました。

◆2 もしわが子が発達障がいをもっていたら…あふれ出す悩み

いとこである母親は、次から次へと、悩んでいることを話してきました。

①母親「普通の小学校の入学は難しいの?!」

②母親「原因は何なの?!」

③母親「治らないの?!」

④母親「次男も少し変なの。…。もし、二人とも障害児だったら、私一人で子育てできるの?!」

⑤母「障害があると、働けないの?!」

⑥母親「(もし働けない、それどころか自立できないとしたら)子供たちが大人になっても、私が一生面倒見なきゃならないわけ?!」

⑦母親「女の子なら私も女だからまだしも、男の子だから性の問題が出てきたら、どうしたらいいの?!」

⑧母親「最近、今まで息子が仲よくしてきた幼稚園の女の子にも『イヤ。』と言われ、心配?!

(仲間はずれにされたらどうしよう。)」

⑨母親「(子ども同士で一緒に遊べなくなってくると)、今つきあっている親たちとつきあえなくなるの?!」

⑩母親「(こんな悩みが多く)お先真っ暗で、もう二日間寝てないの。今、どうしたらいいの?!」

母親だけに真剣です。現在のこと、少し先のこと、思春期のこと、大人になってからのこと…悩みが次々とあふれ出していました。そして、それに押しつぶされそうな感じでした。

◆3 母親の悩みへの対応 ― Q&A ―

私としては、母親のそんな気持ちを受け止めつつ、私が分かる範囲でかつ、相手が受け止められる範囲で、努めて誠実に応えました。

Q.① 母「普通の小学校の入学は難しいの?!」

👉①私の伝えたこと

医師による診断がないし、実態がよくわからないので、Aさんについて具体的に応えることはできませんが、

次のようにいろいろなケースがあることを話しました。

発達障害をもった子どもの就学先は、

 ①特別支援学校の小学部

 ②小学校の中にある「特別支援学級」

 ③小学校の通常学級

の大まかに言って3通りあること。

②の「特別支援学級」といっても、
基本的に通常学級に居ながら国語、算数など特定の教科だけ特別支援学級に通うタイプ

②基本的に特別支援学級に居ながら音楽、体育など交流が可能な教科だけ通常学級で学習するタイプ

の大まかに言って2通りあること。

そして<基本的に特別支援学級に居ながら音楽、体育など交流が可能な教科だけ通常学級で学習するタイプ>にしても、学校・担任によっていろいろあり、実際はいろいろな学校・学級を見学して決めるとよいこと。

さらに、特別支援学級にはじめは在籍していて途中から通常学級に戻るケースや、その逆にはじめは通常学級に在籍していて途中から特別支援学級へ移るケースもあること などを話しました。

いずれの場合も、今のその子に合った(言い換えれば、最もその子の成長を促す)教育の場はどこかという視点で、親が選択することになることを話しました。

<小学校の通常学級に行けるかどうか>という問いは、<今の子どもの実態からどのような教育の場がふさわしいか>という問いに変わっていくことになるでしょう。

■補足

○1年生のうちは、ちょっと無理してでも通常学級に入れていたのが、中学年ぐらいになってやっぱり無理だとなって、支援級に入るケースはよくあります。

○その逆で、低学年あるいは中学年ぐらいまでは支援級にいて、その中でだんだん遅れが取り戻されてきて、「これなら普通学級でも大丈夫」となって、通常学級に戻るケースもあります。

私が最後に勤務していたH小学校では、両方のケースがありました。

Q.② 母「原因は何なの?!
■Q.③ 母「治らないの?!」

👉②・③私の伝えたこと

○親の躾によるのではなく、脳の中枢神経系自体に(何らかの要因による)機能不全があること。それがそもそもの原因であることを話しました。これはほぼ定説で、ですから親の躾が悪いからとか、そういうことではありません。

○私の担任している子どもの例を話して、教育や医療の力で大きく軽減できる可能性があること。

ここからの(適切な)対応によって、大きく将来が変わりうることを話しました。

小さいときほどよくなる可能性が高く、早めに診断を受け、適切な療育を施せるよいチャンスであることを話しました。

例えば、普通なら自然に友達とかかわれるのに、発達障害のためにそのままでは友達とかかわれないとすれば、保育士さんが特別なサポートをすることで、そこをある程度クリアーできるようになること を話しました。

(これが特別支援という意味です。だから、特別支援が必要な子に特別支援教育をするのは、インフルエンザの子にインフルエンザの治療をするのと基本的に同じです。)

■ネグレクトや虐待が原因の場合もある

ただし、「第4の発達障害」とか言われているように、ネグレクトや虐待をすると、自閉症児と似た症状や、多動で衝動的な傾向の見られる、発達障害と同じような症状を呈するようになります。

これだけは、親の育児態度が原因になります。そうでなければ、そもそも脳の中枢神経系自体に機能不全があることが原因となります。

■発達障害は治らないか

小さい時ほど良くなる可能性が高いです。 特に「8歳までの脳は変えやすい」と言われてます。
ただし、発達障害が治るっていうのとは、少し違います。マイナス面が軽減する、良くなるという意味です。

私が担任した、小学校入学から卒業まで担任した自閉症のS君は、特別支援学校高等部に入って、介護士の資格を取って、就職できました。
小学校入学の際にスクリーニング検査を受けるわけですが、そのスクリーニングテストをビリビリ破いた子もいました。その子は、私が担任したのですが、どんどん良くなっていき、算数なども通常学級でできるようになりました。中学は、通常学級で頑張り、普通高校に入学しました。

だから、教育や医療の力で、発達障害は大きく軽減できる可能性が本当にあります。

Q.④ 母「次男も少し変なの…。もし二人とも障害児だったら、私一人で子育てできるの?!」

👉④私の伝えたこと

「一人でも心配なのに、二人ともそうだったらと思うと、不安でたまらないんだ。」と気持ちを受け止めたうえで、(後日、弟も発達障害があると判明しています)

①幼稚園の先生たち 

②医師 

③夫(妻と一緒に心配して行動してくれている)

④祖母・祖父 …・と、一緒に悩み、子育てをしていこうとする人がいること。

障害をもった子供たちの親の会もあること。
私も微力ながら話を聞いたり、アドバイスしたりすることはできること などを話しました。

つまり、一人ではないこと。みんなで育てていけばよいことを話しました。

■その後のこと

実際、医師に診てもらった結果、正式に診断が出て、特別に1人保育士がつきました。

さらに、発達障害をもった園児を放課後に集めて療育してくれるデイサービスセンターが、S県にはあったそうです。さっそく連れていったら、同じような子がいて、その親と仲良くなったそうです。そして、子どものことから、「今日の夕食何にする」とか、夫の愚痴とか、そんなことを話せるママ友を見つけることができました。

Q.⑤ 母「障がいがあると、働けないの?!」

👉⑤私の伝えたこと

私は、電話を受けた2009年5月現在、3名の障害をもった子どもを担任していました。その3名ともほぼ間違いなく働けるようになると思うと話しました。

つまり、障害があっても、もちろんその程度にもよりますが、十分働けるようになるので希望をもってよいことを話しました。

たとえ現在の実態がほど遠いように見えても、教育や医療の力で、大きく可能性は開かれていきます。

■その後の展開

前に書いたように、一人は自閉症でしたが、特別支援学校高等部を卒業し、介護士の資格を取って、介護士として働いています。

そのうちの一人は、入学前のスクリーニング検査用紙をビリビリとやぶいた子で、ADHDの子どもでしたが、中学から普通学級に移り、普通高校へ行きました。

もう一人は、アスペルガーで暴力傾向もあって大変だったのですが、農家の長男一人っ子ですから、おそらく農家を継いだと思います。

それ以外に、6年生になって反抗挑戦性障害で入級してきた子もいました。その子は、中学の特別支援学級から農林高校に入りました。

2.3%障害者を雇用しなけらばならないという障害者雇用促進法というのがあります。もちろん障害によりますが、こうした国の政策もあって就職の可能性は充分あります。

ただし、対人関係の問題とかいろいろありますから、本人が働き続けられるかどうかの課題はあります。

Q.⑥ 母「(もし働けない、それどころか自立できないとしたら)子供たちが大人になっても、私が一生面倒見なきゃならないわけ?!」

👉⑥私の伝えたこと

長男一人でも、大変なのに弟も発達障害児だったら不安でたまらない。

母親は、そういう気持ちで、いっぱいでした。

「将来のことを考えると、荷の重さに押しつぶされるような感じなんだ。」と気持ちを受け止めたうえで、

福祉サービスが充実しており、障害者手帳の特典や、障害者雇用促進法もあり、社会全体でサポートしていくシステムがあるから、安心するように話しました。

■補足

例えば、

○新潟県長岡市にある、和島トゥー・ル・モンドというレストランは、指定障害福祉サービス就労継続支援A型の施設なのです。

ここのウエイターさんは障害者で、職業指導員さんが付いて様々な仕事を覚えています。(コックさんは健常者です)本人がそういうまで、気づかなかったぐらい接客がしっかりしていました。つまり、このレストランは、障害者の知識と能力の向上を図る施設でもあります。

○S県N県立高校は、障害者手帳を持ってないと入れない高校で、卒業すると100%就職できるそうです。

障害者雇用促進法の関係で、この母親のママ友の息子は、その高校を出て、みずほ銀行に就職しました。

例えば、このように、社会全体でサポートしていくシステムがあります。

Q.⑦ 母「女の子なら私も女だからまだしも、男の子だから性の問題が出てきたら、どうしたらいいの?!」

👉⑦私の伝えたこと

性の問題は、女の子でも同じく問題であること。
私も二人の娘の親として、性の問題にどう対処したらよいかと悩み始めていること。

まだだいぶ先のことであるので、その時期になったら考えればよいのでは…と話しました。

まだ園児です。遠い将来のことではなく、現在にフォーカスすることが大切です。

Q.⑧ 母「最近、今まで息子が仲よくしてきた幼稚園の女の子にも『イヤ。』と言われ、心配?!

(仲間はずれにされたらどうしよう。)」

👉⑧私の伝えたこと

「今まで仲よくできていたのに、それだけに心配だよね。」と気持ちを受け止めたうえで、

○いじめ(仲間はずれ)の可能性は誰にでもあること。優しい子ならかえっていじめのターゲットになったり、リーダーで中心になる子だったら大丈夫かというと、逆に目立つからやられたりとか、いじめられる可能性は誰にでもあること

○発達障害があるわけだから、特別なサポートが必要なことを話しました。

具体的に言えば、
・ハンデキャップがあるわけでだから、放っておいて自然にうまくいくのは難しいこと。

・保育士さんや親が、Aさんとお友達がうまくかかわれるように、遊びの仲立ちというサポートをする必要があること(段階によっては、むしろ保育士さんや親とマンツーマンで遊ぶこと。) を話しました。

■補足

ところで、2021年の東京パラリンピック競泳女子で2つの銀メダルを獲得した山田美幸選手(新潟県阿賀野市出身)を知っていますか。このように、腕がなくても背泳ぎで泳げます。

そのスウェーデン版で、レーナ・マリアという女性がいます。レーナさんの方がずっと古くて、1968年生まれの人です。両腕ばかりか、足も片足半分しかない人です。

レーナさんの伝記に書いてあるのですが、母親が、娘のレーナさんに水泳習わせるかどうか、とても迷ったのです。そうした体を晒すことになるから。迷った末にやらせてみたんです。そしたら、レーナさんは、すごく喜ぶばかりか、周りがみんなドキッとしているのに、「私スターかしら。みんな私を見てくれる」という感じで、本人は全然気にしない。

小学校入ってからも、「1本足!」とか言われても、本人はものともしない。

「チャレンジド」っていう言葉があります。こういう障害をもっとお子さんは、障害をものともしないでチャレンジをする強い魂を持った存在としてみようっていうことです。

レーナ・マリアのお母さんは、実は作業療法士さんの資格をお持ちの方なのですが、乗り越えていくだけの力を持った存在だと思って接していました。
逆に発達障害児を「憐れむべきかわいそうな存在」と見ては絶対にダメです。そのような存在として見て育てると、本人が自分は憐れむべく弱い存在なんだと思い、本来の強さが育たない可能性が出てきます。
「あなたは障害を乗り越えていくだけの力を持った存在だよ」と思って接した方が、子どもは強く逞しく育ちます

Q.⑨ 母「(子ども同士で一緒に遊べなくなってくると)、今つきあっている親たちとつきあえなくなるの?!」

👉⑨私の伝えたこと

①子ども同士のかかわりが切れることが、そのまま親同士のつながりが切れることにつながらないこと、

きっとつきあいが続くお友達があるだろうこと。

②そして、障がい児をもった親同士という新しいお友達も現れるだろうこと を話しました。

■その後のこと

2022年12月、いとこの母親のその息子は高校3年生になっているのですが、この頃何かとお世話してくれた女の子のお母さんと、今でも付き合いがあるって言っていました。

前にも書いたように、放課後の発達障害児のためのデイサービスを利用する母親同士で、園児のうちに共に励まし合えるママ友に出会うことができました。

つまり、二つとも私の予想通りになりました。

Q.⑩ 母「(こんな悩みが多く)お先真っ暗で、もう二日間寝てないの。今、どうしたらいいの?!」

👉⑩私の伝えたこと 

「栄養をとって、ゆっくりと睡眠と休養をとって休んで。」と、すぐに言いそうになりましたが、それが分かっていてもできなくて苦しんでいるのだから、そう言うのを思いとどまりました。

最後に話したことは、次の通りです。

◆1まず、医師からきちんとした診断を受けること

(既にその日も決まっていると言いました)
→ 正式な診断があれば、保育士さんが一人付くようになり、特別なサポートができるから。

・その際、お家や幼稚園での(困っている)実態を、医者によく話せるように、今からメモに整理しておくこと。

・同時に、Aさんの困っている言動について、親として具体的にどう対処したらよいかも問うとよいこと。

(様々な困っている言動を聞かされた。)

◆2障害児をもった親同士でつくる「親の会」へ問い合わせてみることもよいこと。
◆3早めに正しい診断を受け、適切な対応をとれば、それだけ障害を軽減し、二次障害も予防できやすいなどを話し、「早めに気づいてよかった」と励ました。
◆4最後に、一人で悩まないゆっくりと休養をとり、栄養をとることも、忘れないことを話した。

以上、たっぷり1時間。いとこでもある母親との、電話でのQ&Aでした。

はじめに比べて終わりには、母親の気持ちはずいぶん落ち着いたように、私は感じました。

◆4 終わりに

今ならば、オンライン親の学校で提供する、発達障害児のための子育てプログラム

を受けたら絶対いいよ!

こう言うと思います。

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